埋伏智歯を抜いてきた

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埋伏智歯でも抜いたほうがよい

「智歯(ちし)、抜きましょうね」とかかりつけの歯科に、昨年末奨められました。 智歯(ちし)とは親知らずのことです。

右下の親知らずが完全に歯茎の中に埋まっていることは、以前から歯科のレントゲンでわかっていました。 痛みもないし日常生活に支障はないので、正直このままでいいのではないかと思っていました。 それでもかかりつけの歯科医から「嚢胞のできる可能性がある」と説明を受けて、大きな病院の口腔外科への紹介状を書いてもらいました。

嚢胞というのは、埋まったままの歯の周囲に袋状の病変ができるもので、放置すると顎の骨を溶かしていくことがあるそうです。今は何も症状がなくても、将来トラブルの火種になりやすいのだそうです。歯科医の言葉を借りれば、そういうことでした。

大学時代のトラウマ

実は親知らずの抜歯はこれが初めてではありません。大学生の頃、左下の埋伏した親知らずが隣の奥歯の神経を圧迫して痛みが出ました。

まず近所の町の歯医者に行ったのですが、レーザーで歯茎を切開して2時間ほど格闘した挙げ句、「今日は抜けません。お帰りください」と言われました。あの徒労感は忘れられません。呆れて別の大学病院に駆け込み、切開の傷が治るまでひと月待ってから、ようやく抜歯に臨みました。

大学病院の口腔外科は30人から50人は同時に治療できそうな広大な治療室でした。局所麻酔を打たれ、いざ抜歯が始まると、埋伏している親知らずが大きくてそのままでは抜けません。先生がノミとトンカチを持ち出して、顎にガンガンと衝撃を与えながら歯を割り始めました。振動が頭蓋骨に響くなか、意識が遠のいて気絶しました。

気がつくと処置は終わっていて、広い治療室にひとり寝ていました。窓から夕陽が差し込んでいたのを覚えています。

20年越しの再戦

あの体験があるので、今回の抜歯は正直恐怖でした。口腔外科の診察椅子に座った瞬間、大学時代の記憶が鮮明によみがえります。

局所麻酔が効いてから処置が始まりました。今回もやはり完全埋伏なので、歯茎を切開し歯を分割しながら抜いていくという手順だったのでしょう。ドリルで削る振動がずっと続いて、いつ終わるのかと思うくらい長く感じました。途中歯を削っているマシンの刃が折れたようですが、今回はノミやトンカチは出てこなかったので気絶せずに無事終えることが出来ました。

抜いた後は麻酔が効いているので意外に平気でしたが、そろそろ2時間ほど経過しているので麻酔が切れてズンズンと痛み出しました。

親知らずの豆知識

せっかくなので、親知らずについて少し調べてみました。

親知らずの正式名称は第三大臼歯です。智歯とも呼ばれ、英語ではwisdom toothといいます。知恵がつく年頃(17歳から25歳頃)に生えてくることからこの名前がついたそうです。日本語の「親知らず」の由来には諸説ありますが、昔は寿命が短く、この歯が生える頃には親が亡くなっていることが多かったからという説が有力です。

最近の若い世代では親知らずが先天的に欠如している人が増えているそうです。ある研究によれば、現代人の約20%から25%は親知らずが1本以上生えてこないとされています。人類の顎が小さくなる進化の過程で、第三大臼歯が不要になりつつあるという説が有力です。数万年後には、親知らずという概念自体がなくなっているかもしれません。

埋伏智歯が問題を起こすのは、現代人の顎が小さくなったのに歯の本数が減りきっていない、進化の過渡期にいるからだともいえます。今日の私の苦労も、進化のタイムラグのせいだと思えば少しは気が楽です。

少しだけ。