ハイエンドを捨てた2026年のエフェクターボード
高価で多機能なエフェクターを次々と手放し、行き着いたのはつまみの少ないシンプルなボードでした。どれも音は文句なく素晴らしかったのに、なぜ結局「あの音」に戻ってしまうのか。2026年現在の構成をたどりながら、その理由を考えます。
Table of Contents
少し前にエフェクターボードを整理したので、記録しておきます。
2026年現在のエフェクターボード
現在のエフェクターボードは以下のようになっています。
| Category | Effector | Description |
|---|---|---|
| Buffer | BOSS TU-3W | チューナーですが、主に優秀なバッファとして利用 |
| Compressor | MXR Dyna Comp | 主にクリーントーンでのサスティーンが必要な時に使用 |
| Henretta Engineering Orange Whip Compressor | Orange Squeezerのクローン。オーバードライブ時 に使用 | |
| Noise Gate | TC Electronic Iron Curtain Noise Gate | Orange Whipのヒスノイズが酷かったので追加 |
| Drive | Broadcast AP-II | Fuzzやコンソール的な歪みが必要な時に使用 |
| Vin-Antique PPSE Classic | TS的なOverdrive。芳醇な音色なので愛用 | |
| Boss DS-1W | 定番Distortion。今でも大好きな歪み | |
| Ambience | UAFX Orion Tape Echo | テープ式エコーのシミュレーション |
| Amp | DSM&Humboldt Simplifier MK-II | アナログのアンプシミュレーター |
| Speaker | YAMAHA MS101-4 | アンプなんか置けないのでヤマハのパワースピーカー |
上記以外に次のものを持っています。
- BOSS PX-1 : 歴代エフェクターを再現できるマルチエフェクター
- BOSS VH-30H : ボリュームペダル
- Ibanez WH10V3 : ワウペダル
Compressor部
以前はUAFX Max Preamp & Dual Compressorを使用していました。
Dyna Comp/Teletronix LA-2A/UA 1176をシミュレーションできるコンプレッサーを2つ搭載し重ね掛けできました。 更に伝説的な真空管プリアンプ610のシミュレーションも付いており、仕様としては最強です。 しかし、機能が多い分だけ操作系も複雑で、慣れることができませんでした。また、LA-2A/1176はLogic Proのプラグインで処理できます。
結局欲しいのは、昔聞いた「あの音」です。
- MXR Dyna Comp
- 現代的ではないかもしれません。CA3080というOTA1石構成で、ノブはOutputとSensitivityの2つだけです。ブレンドノブもなく常時フルウェット、Sensitivityを上げるほどヒスも増えるトレードオフが固定で乗ってきます。それでもミッドが持ち上がってスクワッシュした質感と、ピッキング直後のポップ音に続くなめらかな「ブルーミング」が個性です。欲しいのは、あの「パコーン」と伸びていく音なのです。
- Henretta Engineering Orange Whip Compressor
- フィードバック型のJFETコンプで、Orange Squeezerのクローンです。オリジナルはギターのジャックに直結する形だったので、子供の頃「あのギターについたオレンジの箱はなんだ?」と思ったのを覚えています。Dyna Compのようなブルーミングではなく、ピークを抑えて輪郭を整えるリミッター的な効きで、歪み系の前に置くとピッキングの強弱によらず歪み量とサスティーンが安定します。現代では邪道ですね。電源のためかヒスノイズが気になり、後段にNoise Gateを足しました。
Drive部
Simplifier MK-IIでも歪みは作れますが、若干ノイズが多いの で通常はセッティングをクリーンにしてエフェクターで歪ませています。
- Broadcast AP-II
- Hudson Electronics製、Ariel Posenのシグネチャーモデルです。1960年代の放送局コンソールを下敷きにした2チャンネルのプリアンプで、片方はトランス入りのシリコン回路による滑らかで太い歪み、もう片方はトランスを省いたゲルマニウム回路による明るく荒い歪みが得られます。両者はカスケード接続でき、軽いブーストから激しい歪みまで作れます。Fuzzやコンソール的な飽和感が欲しい場面で使っています。
- Vin-Antique PPSE Classic
- 京都発のハンドメイドブランドによるTS系オーバードライブです。標準モデルのPPSE '79が非対称クリッピングなのに対し、本機はオリジナルTSに近い対称クリッピングを採用し、真空管アンプとの併用を想定しています。「温かくも反応の速い音」と「ブースターにしても煌びやか過ぎない芳醇な倍音」をテーマに作られており、Tone/Gain/Volumeのシンプルな3ノブ構成です。透明感のあるクラシカルな効きが気に入って常用しています。
- Boss DS-1W
- 1978年発売、BOSS最初期の歪みのひとつである定番DS-1のWaza Craft版です。DS-1は途中でオペアンプが変わっており、本機のStandardは1994年の回路変更以降の現行DS-1らしいタイトな歪みを忠実に再現します。Customは+6dBのブーストと強いミッドの持ち上げが加わって音がぐっと前に出ます。フィルタリングも改善されてジリついた帯域が減り、ハイゲインでも破綻しにくくなりました。今でも大好きな定番の歪みで、手放せません。
Ambience部
空間系のディレイやリバーブは、レコーディングではLogic Proのプラグインで掛けてしまうので、ボード上のこれは基本的に練習用です。
UAFX Orion Tape Echoは、名機Echoplex EP-IIIを下敷きにしたテープエコーのシミュレーターです。空間系は歪みの後段に置きたいので、Simplifier MK-IIのSend/Returnループに繋いでいます。
ただ、私がこれを手放せない理由はエコーよりもプリアンプにあります。EP-IIIは通すだけで音が太く前に出る「EPプリアンプ」が有名で、本機はこれを忠実に再現しています。背面のスイッチでドライ信号にもこのプリアンプを掛けられるので、ディレイをオフにしてもトーンを整えるプリアンプとして常時オンにしています。
まとめ
今回の整理では、Compressor部で触れたUAFX Max Preamp & Dual Compressorに加えて、Free The Tone Overdriveland Custom ShopやStrymon Fairfaxといった歪み系も手放しました。どれも音は文句なく素晴らしく、使っていて不満があったわけではありません。
それでも結局、自分が「いい音」と感じるのは客観的な優劣ではなく、幼少期に聴いて刷り込まれた音なのだと改めて思い知りました。あわせて、操作系はシンプルなほうがいい、つまみは少なければ少ないほどよい、というのが今回の教訓です。多機能で高性能な機材ほど、かえって「あの音」から遠ざかってしまう気がします。
しばらくはこの構成で安定しそうです。